デジャヴ

似てる。








 朝食の時から視線はずっと彼女を追っていた。
金髪に赤いカチューシャの映える―瞳はそっくり青い少女。

彼女の一挙手一足等を逃さず記憶に行き渡す。
食べる、片付ける、くつろぐ、笑う、赤子をあやす―。
そして最も好きな人物に話しかける仕草は・・・

わずかな違いこそあるものの、ほとんどの所作が奇妙なほど彼女に似ているのだ。
今更何を。と思うと同時に一人時間を巻き戻す。
―古く狭いアパルトマンの一室で、キッチンに向かう女性。
もはやフランソワーズではなかった。


「・・・ヒルダ・・・」


実際に声を掛けたのか感覚はない。
だが、彼女は振り返るとニコッと微笑んだ。





「・・・・・・・ト・・・・・・・アルベルト!」




 我に返るとカチューシャの少女が自分を心配そうに見つめていた。
「うん? 何だ?」
「『何だ』って・・・」彼女は呆れたように横にいるジェットと顔を見合わせた。
「こっち見てボケーッとしてるんだもの。気になって当然でしょ?」
「ぁ・・・」
「どうかして? 私の顔になんか付いてる?」
「ああ。さっき食ったお好み焼きの青のりがな」
「えっ!? 嘘!? どこどこ!?」
「嘘」
「なっ・・・ひっどーい!!」
向かい側の、ジェットと彼女とのやりとりにふと懐かしい感覚を認めた。




―もう・・・アルベルトったら・・・!




耳に染みこんだ彼女の声は、永久に消えない。
消すつもりもない。
嫌なものだけを捨て、残りはそっとしまっておくべきだ。
これは・・・・・・未練とかじゃあないだろ?


「おいアルベルト、何ニヤけてるんだ?」 
彼の異変に気づいたジェットが怪訝そうに見てきた。
「ちょっと変だぜ、お前。病院で診てもらってきた方がいいんじゃねぇの?」
「うるせぇ! 余計なお世話だ」

そう言って新聞の一面を広げた。


23でちょいとイチャつかせたくなりました。
4さんはずっと恋人を思ってるといい。
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